「推定少女」、感想。

推定少女 (角川文庫)推定少女 (角川文庫)
(2008/10/25)
桜庭 一樹

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あらすじ
とある事情から逃亡者となった“ぼく”こと巣篭カナは、逃げ込んだダストシュートの中で全裸の美少女・白雪を発見する。黒く大きな銃を持ち、記憶喪失を自称する白雪と、疑いつつも彼女に惹かれるカナ。2人は街を抜け出し、東京・秋葉原を目指すが…直木賞作家のブレイク前夜に書かれた、清冽でファニーな成長小説。幻の未公開エンディング2本を同時収録。

これで三冊目となる桜庭一樹さんの小説。今回も僕の期待した通りの桜庭節が展開されていました。今回僕が読んだこの作品は、実は2004年にファミ通文庫から一度出ている作品となっています。そちらの方はもう古く、普通の書店では手に入らないと思いますが。角川版の今作なら容易に手に入れられると思います。

しかし、最近僕がラノベと一般の境界線上にあるような作品ばかり読んでいるせいか。本当にライトノベルってなんなんだろうなぁと思ってしまいます。僕からしてみれば確かにこの作品は「なるほどライトノベルだな」と感じるものなのですが。同時にただライトノベルだと言い切ってしまうのにはひっかかりを憶えるのです。
「少年少女向けに作られた作品」ではあるのでライトノベルだとは思うんですが……。それはやはり、最近のライトノベルとは趣が違うものになっているからでしょうか。
それもそのはず。これはもう10年も前の作品になるわけですから。10年。当時小学生で将来のことも社会のことも分からなかったようなガキが成人して、色々と将来というものに向き合わなければいけない時期になるほどの時間です。「昔の少年少女向けに作られた作品」と「今の少年少女向けに作られた作品」が同じである筈がないのです。ライトノベルとはその時代の少年少女にとっての最先端。僕は既にそこから外れた人間です。少年少女でもなんでもない。ライトノベルを好んで読むのも、ただの郷愁からか、それとも変わらぬ感性故か……。

と感想とは関係ない話をしすぎましたね。そろそろ感想へと入りましょう。

この作品を読み終わった今現在。なんというか、気持ちの整理を出来ないでいる状態にあります。余韻が抜けないといいますか。まだまだ冒険の続きに思いを馳せていたいと言いますか……。それでも僕は現実側の人間で、いつまでも物語に浸っているわけにもいきません。はい、という訳でとっとと感想を書いて現実に戻ろうと思います。

一言で言ってしまえば、夢の様な作品でした。忙しなく次々にシーンが移り変わり、何が本当で何が嘘なのか。読んでいても全然分からない。ただ目の前で展開されている状況に主人公と共に驚きつつ見守る事しか出来ない。他人の夢である筈なのにまるで自分の夢の様な。迷いこんでしまったかのような錯覚を起こす作品でした。

そんな非現実的で、でも少女を取り巻く状況はどこまでも現実的な物語のラストには色々と思うところがあります。この作品には3つのラストが用意されてますが。どれもハッピーともバッドともいえないものだなと僕個人は思いました。非日常から現実に戻って、確執やら蟠りやら煮え切れない思いやら悩みも抱えて。それでもやっぱり生きていくしかなくて。大人は好きになれなくて。でも自分もそんな大人になってしまうんだなと悲観して。

「子供だって色々悩みがあって大変なんだぞー!」と訴えかけてくる作品でした。言ってしまえばいつもの桜庭作品だなという感じなんですが。今まで僕が読んできた桜庭作品よりは救いがあるようにも思われますし、見方によってはハッピーエンドとも言えます。そういう意味ではどこか救われた作品かな、とも。マイナス地点から、少しはプラスに傾けられたんじゃないかな、なんて。

砂糖菓子と同時期に発表されたこの作品には甘ったるいロリポップを弾き続ける少女はいません。でもその代わり、もっとずっしりとして破壊力のある。実弾をぶちまける少女がいました。


子供ながらに悩みもあるけれど、そんな色々なまどろっこしい物は全部宇宙人のせいにして、他人のせいにしてぶち壊してしまおうぜ。黒くて重い、ララの銃で




満足度:★★★★☆
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東 京人

Author:東 京人
感想は主にラノベが中心。ライトノベルとは本格的に読み始めて9年の付き合い。初めて読んだのは12年前くらい。好きなジャンルは百合とゼロ年代だけど、面白そうなら何でも読む。基本文を書くのも妄想するのも何かを作ることも好きなので、自分で小説とかも書いてたりする。

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