「ナルキッソス」、感想。

ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)
(2008/07/23)
片岡とも

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あらすじ
「…ただ、生命の尽きる場所」。ある冬の日に阿東優が入院した「7F」は、そういう場所だった。そのことを彼に告げたのは、長い黒髪を持つ同じ入院患者の美少女。名前はセツミ、血液型O…手首の白い腕輪に書かれていたのは、ただそれだけ。他にわかることといえば、いつも不嫌機そうな顔をしているということと、優より年上なのに、まるで子供のような外見だということぐらい。最期の時を迎えるのは、自宅か7Fか。いずれの選択肢をも拒み、ふたりは優の父親の車を奪って走り出す。行き先も、未来さえも持たないままに―。人気ゲームクリエイター片岡ともが綴る感動のストーリー、待望の小説化。

なんとも、ラノベらしくない作品だった。ライトノベルで扱うテーマとしてはあまりにも重すぎる「生」と「死」。全然ライトじゃない。しかし、文体自体はものすごくライトで読みやすかった。勢いがあるというか、すっと心の中に入っていく文章だった。無駄な装飾をせず、ただ伝えたい事を的確に相手に伝えようという意志を感じさせた。

特に大きな盛り上がりもなく、淡々とゴールに向かっていく話なのだが。なぜか退屈はしなかった。読み始めたら止まらなくて、結局一気に読みきってしまった程だ。自分は割りと飽き性なので小説等も何回か休憩を挟んで読む事が多いのだが。この作品にはそんなものは必要なかった。この作品が放つ独特の雰囲気に、あてられていたのだろう。

この作品を読んで。もしも自分の親友と呼べる程の仲の人間が入院し、死を待つしかないと言われた時。自分は最期までお見舞いにいってやれるだろうかと考えた。きっと僕は、出来ないだろう。最初の頃は行ったとしても、一ヶ月もすれば通う事もなくなる。たまに思い出しはするけれど、態々お見舞いに行こうとまではならないと思う。それは別に僕が冷たい人間だから、という訳ではないと思う。
僕はそれなりにお人好しで、善人で、でもあくまで普通の人間だ。自分の日常を崩してまで誰かのために何かをしようとは思えない程度の。

この作品は、どこまでも切なくて、でも不思議と綺麗な話だった。近年のライトノベルのようなドキドキ感はないが、それでもこの作品には人の心を惹きつける魂〈チカラ〉がある。




満足度:★★★★☆
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Author:東 京人
感想は主にラノベが中心。ライトノベルとは本格的に読み始めて9年の付き合い。初めて読んだのは12年前くらい。好きなジャンルは百合とゼロ年代だけど、面白そうなら何でも読む。基本文を書くのも妄想するのも何かを作ることも好きなので、自分で小説とかも書いてたりする。

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