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「ちーちゃんは悠久の向こう」、感想。

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あらすじ
「ちーちゃんこと歌島千草は僕の家のごくごく近所に住んでいる」――幽霊好きの幼馴染・ちーちゃんに振り回されながらも、「僕」の平穏な日常はいつまでも続くはずだった。続くと思っていた――あの瞬間までは。
怪異事件を境に、ちーちゃんの生活は一八〇度転換し、押さえ込んでいた僕の生活の中の不穏まで堰を切って溢れ始める……。
疑いもしなかった「変わるはずがない日常」が音を立てて崩れ落ちていくさま、それをただ見続けるしかない恐怖を描いた、新感覚のジュブナイル・ホラー。世紀末の退廃と新世紀の浮遊感を内包した、新時代作家・日日日(あきら)、堂々デビュー!!


日日日という作家を知っているだろうか。「ひひひ」ではない。「あきら」である。なんとも読みづらく、また打ち辛い名前である。人を舐め腐ったような名前だ。まぁそれは兎も角。ラノベ読みにとっては「狂乱家族日記」の人といえば通じるだろう。

この時代。僕らの世代に於いて「天才」と言われ思い浮かべる作家。それは各々によって違うだろう。例えば上遠野浩平。例えば桜庭一樹。或いは秋山瑞人、橋本紡。彼らは間違いなく天才である。特に上遠野浩平といえばそれ以降の作家に影響を齎したという意味では白眉かもしれない。しかし、そんな天才たちの中にあって。主観だけでなく客観的な意味でも間違いなく天才と呼ばれる作家。それが日日日である。高校生にして同年にファミ通のえんため大賞(佳作)、角川学園小説大賞(優秀賞)、MF文庫J新人賞、恋愛小説コンテスト、そして今作の新風舎文庫大賞を掻っ攫っていった怪物である。まさに小説を書くために生まれてきたかのような人物。生まれた時点で一般人とはどこかステージが違う。それが日日日だ。

そんな日日日のデビュー作であり、ゼロ年代ジュブナイルとアダルトチルドレンを愛する者には是非読んでもらいたいのが今作だ。

ジュブナイルホラーと銘打ってるだけあり、この作品はまさに「ジュブナイル」の部分と「ホラー」の部分が気持ち悪いくらい噛み合った新種のジャンルである。少年少女達のリアルな日常。主人公やヒロインだけでなく、名前すらない人物にまで感じる人間味。そういったもので構成される世界において、徐々に。しかし確実に日常が侵食され、壊されていく感覚。恐ろしいのは幽霊か、人間か。見えない恐怖と見える恐怖。ただ日常が崩れていくのを見守ることしか出来ない主人公。

幽霊も人間も、本来互いを認識できない。しかし確実に重なり合った世界にいるという設定。オカルトチックなものは本来関わってはいけない領域であり、エンターテイメントに貶めていいものではないという警句。ホラー面に於けるそういった含蓄。

そして主人公とちーちゃんの日常の象徴たる関係性。恋愛感情すら入り込まない、もっと大切で尊いもの。誰かとの未来を思い描け無い少年が、今を守りたいと願った友情。

だからこそ。幽霊の実存よりも、ちーちゃんが悠久の向こうに行ってしまうことが何よりも恐ろしいのだ。

この物語のラストは、正直ものすごくもやもやとした気持ちにさせられる。結局主人公の家庭環境は何一つ改善されてないし、これから主人公が普通に生きていけるかどうかも分からない。ちーちゃんという人間は死んでしまったし、最期のちーちゃんだって白先輩の悪ふざけかもしれない。幽霊も憑依も信じていなかった主人公__モンちゃんが、それでもちーちゃんの存在を信じるならば。彼もまた、悠久の彼方に足を踏み入れたということだ。その先に希望や幸福があるかは……。


満足度:★★★★☆
高校生にしてこの文章を書けてしまうこと。そしてこんな物語を綴ってしまうこと。ほんと恐ろしい才能の持ち主ですわ……。
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Author:東 京人
感想は主にラノベが中心。ライトノベルとは本格的に読み始めて10年の付き合い。初めて読んだのは13年前くらい。好きなジャンルは百合とゼロ年代だけど、面白そうなら何でも読む。基本文を書くのも妄想するのも何かを作ることも好きなので、自分で小説とかも書いてたりする。

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