「塩の街」、感想。

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あらすじ
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女、秋庭と真奈。世界の片隅で生きる2人の前には、様々な人が現れ、消えていく。だが―「世界とか、救ってみたくない?」。ある日、そそのかすように囁く者が運命を連れてやってくる。

一般的には「図書館戦争」なんかが有名かな? といったところの有川浩氏のデビュー作。ラノベ読みとしては塩の街は度々名前が上がる存在であり、死ぬまでになんとしても読まなきゃなと思っていた作品だ。結果として、僕はこの作品を読んで後悔している。今まで読んでこなかったことを。

いや、だってこんなん僕の好み直球な作品ですやん。ゼロ年代ラノベ専門家としてもこの作品読んでなかったのおかしいでしょ。ゼロ年代セカイ系語る上でこの作品読んでないって。なにやってたの僕。

この小説の電撃版が刊行されたのは2004年だが。2004年といえば丁度イリヤが完結し、ハルヒが始まった翌年だ。ラノベ史に於いても一番ライトノベルというものが賑わった年ではないかと思う。ゼロ年代ラノベ事情。その中でもとりわけセカイ系という流れの中では重要な年といえる。そんな年に発売されたこの作品は、今までのセカイ系作品を踏襲した作品でありながらも。強い芯の部分で他にないものを訴えてくる作品だった。

塩害という、人が突然塩になるという突飛な設定から始まるSFモノではあるのだが。ならば退廃モノかといえばそうではなく。本質は前述通り確りとセカイ系なのだ。過酷なセカイで紡がれる人間ドラマ。そしてそこから「セカイを救ってみないか?」という切り口。まさかそっちの方面に展開するとは二章までだと予想も出来なかった。しかし「あぁ、そっか。この話はそっちの方向で動くのか」とすんなり腑に落ちるだけの説得力があったのだ。

そしてこの物語の本質は「愛でセカイが救えるなんて、僕は恥ずかしくていえないけど。結果的に愛でセカイは救えるんだぜ」ってとこなんですよ。入江の「僕達(セカイ)は君たちの愛に乗っかって。ついでに助けてもらうだけ」っていう科白は中々斬新でした。セカイ系っていうのは基本主人公とヒロインの二人でセカイが完結していて。その恋の行方がセカイの存亡に関わってくるんですけど。そういったお決まりをメタ的に俯瞰し、揶揄した言葉なのかなって。

ぶっちゃけた話。僕は女性一人称の生々しい部分のある文章って苦手なんですよ。くわえてこの話は結構辛いシーンも多いですし。でも最終的にハッピーエンドで良かったと心から思える。それは有川さんの拙いながらも実直で、テーマをブレさせない強さのなせる技かなと。

角川文庫版収録の「後の話」も悪くなかったです。最初は蛇足かな~と思ったけど(特に野際さんの話とか)、ラストの締めは本編とはまた違ったよさがあってスッキリしました。

敢えてこの作品の欠点を挙げるならば、二章のトモヤくんは擁護できないというか。とんでもないクズすぎて同情も出来ないってとこですかね。「え、そんな簡単に許しちゃうの?」って感じでちょっと意識の乖離が起きました。あとは更生前のノブオくんはガキ過ぎて苛ついたくらいです。存在が無粋。まぁ成長したノブオくんを見ると、それも良いスパイスだったのかなって気がしますけど。

ま、つまるところこの話は好きな人を死なせたくない。だからそのついでにセカイも救う。

つーなんともシンプルな図式の話です。愛とかセカイとかこっ恥ずかしいけど。それを大にして叫べるほど、これは壮大な恋物語なのでした。


満足度:★★★★☆
★5つけちゃうか悩むけど~~~う~~~ん★4。文章自体の好みは普通だったからね。それで★4。有川氏が実力のある作家だということはわかったけど、他作品を読むかは未定。結構ボリュームあるから。
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東 京人

Author:東 京人
感想は主にラノベが中心。ライトノベルとは本格的に読み始めて9年の付き合い。初めて読んだのは12年前くらい。好きなジャンルは百合とゼロ年代だけど、面白そうなら何でも読む。基本文を書くのも妄想するのも何かを作ることも好きなので、自分で小説とかも書いてたりする。

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