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「エンドブルー」、感想。

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あらすじ
山中の小屋で陶芸に勤しむ岩谷カナは、一年前に知り合った新城雅と、町でちょいちょい会っている。カナは雅に膝枕をして世間話をするだけで、なぜ会おうと言われるのかと思っていたが、ある日、雅がカナのもとを訪ねて来て──。

実家のお茶屋を継いで、このまま一生を終えるのも悪くないと思っていた矢先、わたしの前に現れたのは姪だった。高校生で兄の娘。そんな女の子がわたしの彼女になって、一緒に過ごしていると、昔の知り合いを連想する。鳥のような、でも飛びもしないで走ってばかりいる鳥のような彼女のことを──。

少女たちの鮮烈な想いが弾ける作品集。


『クロクロクロック』と『少女妄想中。』の後日談からなる短編集。週報登録時のタイトルは『入間人間 百合短編集(仮)』ではあったけど、後に『エンドブルー』へと変更された。変更された時はクロクロクロックの方が百合以外の短編なのかな? と思ったけど、蓋を開けてみれば全部百合でした。

さて、本作のうち『ガールズ・オン・ザ・ライン』と『雅な椀』はクロクロクロックの後日談です。
僕はクロクロクロックは未読なので、登場した両名――カナと雅についても、その背景もよくわからんかったが、それでも2作とも百合として十分に楽しめた。他人に対して関心が薄く、ボケたところのあるカナと、そんなカナに執着する殺し屋さんの雅。あんまり他人に関心がない、といっても、しまむらさんみたいに一歩引いてる感じではない。多分カナは、しまむらさんほど器用じゃない。自分が他人の人生に関わったり、他人に影響を与えることが怖い……という意味で、深く入り込まないようにしているのだろう。でもそんなカナが、雅の人生に踏み込んでいき、雅もまた、カナのためにも死にたくないと願う。互いに難のある性格だけど、それでもうまくやっていける気がするよ。
あとね、カナが一番しまむらさんと違うなぁと思うのは、器用じゃないからこそ、感情がストレートに出て、雅からの触れ合いやキスにドギマギしちゃうのが可愛いんだよね。まぁ今のしまむらさんも安達相手に照れたりするけどさ、カナほど露骨じゃないから。ある意味しまむらさんと安達足して2で割ったような造形のキャラなのかも?

次に『少女妄想中。』より『光る風の中』と『今にも消える鳥と空に』。
『少女妄想中。』での『銀の手は消えない』みたいに、夢と現実が溶け合ったような不可思議な世界に迷い込んだ芹とアオ。ただし、芹は現在の(40代の)姿で、アオは芹と別れた時の姿で。
この世界は誰のための世界なのか、と考えると、個人的には芹寄りだなと思いつつ、やっぱりアオにとっても必要な世界だったんだなと思う。
互いにちゃんとお別れを言うために。自分が今いるべき場所を再確認するために。
芹には姪が、アオには彼女がいる。互いに誰かの背を追いかけていた二人が、やっと立ち止まる場所を見つけたんだ。
芹が過ごした二十年。アオが消えてからの二十年は、芹にとって意味あるものになったんだ。

相変わらず茫洋とした話ではあったけど、中々エモかったぜ。
ところで今の芹ちゃん(40代)の頃のアオ達のエピソードが描かれんのがちょっと気になったり……ほんとに死んでたりしないよね?


満足度:★★★★☆
芹ちゃんと姪のお話はまた何かしらで読みたいなぁ。あと虹色エイリアンの話も読みたかったわ。一応カナエは『少女妄想中。』とも関わりあるし。『クロクロクロック』のカナ×雅コンビも可愛かったから、ちょっと本編も気になってる。でも本編ではいうほど二人の絡みなさそうだしなぁ~。
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「涼宮ハルヒの直観」、感想。

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あらすじ
おかえり、ハルヒ! 超待望の最新刊、ここに登場!

初詣で市内の寺と神社を全制覇するだとか、ありもしない北高の七不思議だとか、涼宮ハルヒの突然の思いつきは2年に進級しても健在だが、日々麻の苗木を飛び越える忍者の如き成長を見せる俺がただ振り回されるばかりだと思うなよ。
だがそんな俺の小手先なぞまるでお構い無しに、鶴屋さんから突如謎のメールが送られてきた。
ハイソな世界の旅の思い出話から、俺たちは一体何を読み解けばいいんだ?
天下無双の大人気シリーズ第12巻!


9年半以上ぶりのハルヒ新刊。もはや久しぶりすぎて驚愕の内容とか全く覚えてないぞ。
まぁ、幸い短編集的な感じで大筋の話は(多分)進んでないが……。

正直ね、直観が出るって話が流れてきた時は、普通にフェイクだと思いましたよ。今まで音沙汰なかったのに急になに? って感じだし。こんだけ経つとね、待つとか待たないとかじゃなくて、存在を忘れてるのよ。
9年以上も新刊待たせといて受け入れられるタイトルなんてそうそうないです。といっても、驚愕時以上にもう話題性というか、賑わいは薄れてしまいましたけど……。

と、本編と関係ない前置きをしてしまいましたが、今巻の内容としては短編、中編、長編の短編集(?)になります。
実を言うと、『鶴屋さんの挑戦状』に入るまでめっちゃ文章読みづらく感じて、中々読み進められなかったんだよね。慣れるとスルスル読めちゃうけど。西尾と同じものを感じるな。

短編の『あてずっぽナンバーズ』は割と今の季節感にあってるのもあり、読むタイミングとしてちょうど良かったな。内容としては初詣に来たSOS団のちょっとした一幕。というか、ハルヒとキョンのイチャイチャ(?)を眺める話。一応ミステリ的な要素もあり、そういやハルヒってジャンル的にはSFミステリだったなというのを思い出す。

中編の『七不思議オーバータイム』は、久しぶりにハルヒシリーズを読む読者に向け、「そうそうハルヒってこんな雰囲気の話だよなぁ」というのを説くような内容でもあったな。“T”という新キャラを交えつつ、SOS団の性格や思考を、“学校の七不思議の創作”というフックで魅せるっつーもので、部室内での空気感も改めて思い出せたよ。

長編の『鶴屋さんの挑戦状』。ミステリ談義から始まり、終始メタ的にミステリーの手法を見せるようなお話であった。二転三転するオチで、部室内で完結する話にもかかわらず中々楽しめたよ。僕はミステリ造詣がないもんだから、トリックは何一つ解けなかったけどな。しかしミステリにおけるハルヒの能力はなんとも厄介で、探偵役としてはもっとも不適切な存在だな。物語内だけでなく、観測する読者側にまで影響があるかもなんて言われたら、『古色迷宮輪舞曲』を思い出しちゃうよ。
つか、鶴屋さんの見つけた謎金属やらハルヒの無意識が自意識を上回ってるかも? なんて話も出てきたりして、不穏な伏線にしか思えんのだが……。

今年中に続き出す気あるなら頼むぜ、谷川先生。そしたら僕も驚愕読み返すから……。というか、マジでこの勢いで今年中にハルヒの新刊出るなら、ハルヒ三期もワンチャンあるぜ? なんだかんだ、中学時代ハルヒにハマってた一人だからさ、また再興するなら追いかけたいっつーか……。ま、そんな感じでよろしくな。あまり期待せずに待ってるよ。次はせめて4年以内にな?


満足度:★★★☆☆

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キョウト/百合瀬久太郎

Author:キョウト/百合瀬久太郎
感想は主にラノベが中心。ライトノベルとは読み始めて12年の付き合い。好きなジャンルは百合とゼロ年代だけど、面白そうなら何でも読む。基本文を書くのも妄想するのも何かを作ることも好きなので、自分で小説とかも書いてたりする。

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