「カラフル」、感想。

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あらすじ
生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになるのだが…。

カテゴリー的には児童文学に近いかな? ライトノベルとも親しいジャンルだし、僕としては好みの梗概だったので手を出してみた次第。

まぁあらすじを観る限りゼロ年代作品の中でもとりわけアダルトチルドレンとしての傾向が強い作品といったところですが。今作は人生やり直し物語です。異世界転生でも過去に戻るでもなく。ホームステイという形で周りの人間や自分自身を見つめ直し、変えていく物語。

先ず僕がこの作品で巧いなぁと思ったところは構成なんですよ。最初プラプラに酷い環境だって脅されてた割には家族は皆普通っぽいし(母親の不倫や父親の偽善。満の意地悪な態度とかも踏まえて)。なんだか肩透かしを食らったなぁなんて思ったんですが。それもその筈で。母親も父親も満も、自殺前の小林真からすれば最悪の人間として刻まれてますが。それを別方面。他人事として改めて見てみると、色々な事情や本質が視えてくるんですよ。

周りが定める小林真という人間。小林真が定める周りの人間。それらが悪い方向に噛み合ってしまったが故の自殺でしたが、最終的に相互理解を得て。人間が織りなす色は白黒だけじゃなく、もっとカラフルなものだと理解するんですよ。

人生やり直す系の話は数多あれど。過去の記憶もなく、かつ手遅れになった状態からのスタートっていうのは斬新でしたね。意識のもちようで、世界は如何用にも色を変える。

この作品のテーマとしては「自分が見ている側面だけが人間の全てじゃない」ってとこですかね。だからこそ。時には自分を客観視することも大切なのかもしれません。

だって、他人事になれば、人生だってやり直せる。

つまりはそういうこと。


満足度:★★★☆☆
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「タイムカプセル浪漫紀行」、感想。

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あらすじ
「探しに行こうよ、タイムカプセル!」考古学者である父の「遺跡ねつ造」事件で、同じ考古学者となる夢を砕かれた青年・英一。失意の日々を過ごす彼の前に現れたのは、10年前に亡くなった幼馴染の少女・明日香だった。驚く英一をよそに、明日香は10年前と同じ屈託のない笑顔で話しかけてくる。彼女は幽霊なのか。それともよく似た他人なのか。困惑しつつも英一は、明日香と共に「タイムカプセル探し」の旅に出るが―。

「雨の日のアイリス」ですっかり心を捕まれ。好きな作家ランキングベスト5に入るくらい好きになった松山さんの新作。「アイリス」、「フリージア」、「アマリリス」と読んできて、久しぶりに触れる松山さんな訳ですが。

あらすじからも分かる通り。いっちゃなんですがありきたりな話です。でも僕は、松山さんの文章もかなり気に入っているので。それでも感動出来るだろうと期待して読み始めたんですよ。でも……。
う~ん……。かなり期待外れでしたね。本当に今までの作品と同じ作者なのかな? ってくらい文章が軽い。厚みもなくて、情景が伝わってこない。ただでさえストーリーラインが秀逸でも設定が奇抜な訳でもないのですから。せめて文章ぐらい力を入れて欲しかったな、と。

そのせいか。設定的に感情移入しやすそうな主人公なのにそこまで同調出来ず、ヒロインのキャラも妙にあざといというか。現実感に欠けてしまって。全体的に上滑りしている。

それでも王道中の王道な話ですし、終盤ではちゃんと胸に来るものはあったんですよ。主人公の夢への向き合い方と決起に。でもなんだかなぁ。真っ向からこっちを感動させたというよりも、僕がこの手の話に只管弱かっただけって感じなんっすよね。

辛辣なようですけど、凡庸。若しくはそれ以下かなと。

なんだろう。何か嫌なことでもあったのかな。書きたい話じゃなかったんだろうか。作者さんが少し心配になりました。


満足度:★★☆☆☆
ほんとは松山さんに★2つなんてつけたくないけど。がっかり感が強かったので★2。似た話(ありきたりな感動モノ)でも、一二三さんの「さよなら流星ガール」は個人の色を出しつつじんわりと沁みる話書いてくれたんだけどなぁ。

「塩の街」、感想。

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あらすじ
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女、秋庭と真奈。世界の片隅で生きる2人の前には、様々な人が現れ、消えていく。だが―「世界とか、救ってみたくない?」。ある日、そそのかすように囁く者が運命を連れてやってくる。

一般的には「図書館戦争」なんかが有名かな? といったところの有川浩氏のデビュー作。ラノベ読みとしては塩の街は度々名前が上がる存在であり、死ぬまでになんとしても読まなきゃなと思っていた作品だ。結果として、僕はこの作品を読んで後悔している。今まで読んでこなかったことを。

いや、だってこんなん僕の好み直球な作品ですやん。ゼロ年代ラノベ専門家としてもこの作品読んでなかったのおかしいでしょ。ゼロ年代セカイ系語る上でこの作品読んでないって。なにやってたの僕。

この小説の電撃版が刊行されたのは2004年だが。2004年といえば丁度イリヤが完結し、ハルヒが始まった翌年だ。ラノベ史に於いても一番ライトノベルというものが賑わった年ではないかと思う。ゼロ年代ラノベ事情。その中でもとりわけセカイ系という流れの中では重要な年といえる。そんな年に発売されたこの作品は、今までのセカイ系作品を踏襲した作品でありながらも。強い芯の部分で他にないものを訴えてくる作品だった。

塩害という、人が突然塩になるという突飛な設定から始まるSFモノではあるのだが。ならば退廃モノかといえばそうではなく。本質は前述通り確りとセカイ系なのだ。過酷なセカイで紡がれる人間ドラマ。そしてそこから「セカイを救ってみないか?」という切り口。まさかそっちの方面に展開するとは二章までだと予想も出来なかった。しかし「あぁ、そっか。この話はそっちの方向で動くのか」とすんなり腑に落ちるだけの説得力があったのだ。

そしてこの物語の本質は「愛でセカイが救えるなんて、僕は恥ずかしくていえないけど。結果的に愛でセカイは救えるんだぜ」ってとこなんですよ。入江の「僕達(セカイ)は君たちの愛に乗っかって。ついでに助けてもらうだけ」っていう科白は中々斬新でした。セカイ系っていうのは基本主人公とヒロインの二人でセカイが完結していて。その恋の行方がセカイの存亡に関わってくるんですけど。そういったお決まりをメタ的に俯瞰し、揶揄した言葉なのかなって。

ぶっちゃけた話。僕は女性一人称の生々しい部分のある文章って苦手なんですよ。くわえてこの話は結構辛いシーンも多いですし。でも最終的にハッピーエンドで良かったと心から思える。それは有川さんの拙いながらも実直で、テーマをブレさせない強さのなせる技かなと。

角川文庫版収録の「後の話」も悪くなかったです。最初は蛇足かな~と思ったけど(特に野際さんの話とか)、ラストの締めは本編とはまた違ったよさがあってスッキリしました。

敢えてこの作品の欠点を挙げるならば、二章のトモヤくんは擁護できないというか。とんでもないクズすぎて同情も出来ないってとこですかね。「え、そんな簡単に許しちゃうの?」って感じでちょっと意識の乖離が起きました。あとは更生前のノブオくんはガキ過ぎて苛ついたくらいです。存在が無粋。まぁ成長したノブオくんを見ると、それも良いスパイスだったのかなって気がしますけど。

ま、つまるところこの話は好きな人を死なせたくない。だからそのついでにセカイも救う。

つーなんともシンプルな図式の話です。愛とかセカイとかこっ恥ずかしいけど。それを大にして叫べるほど、これは壮大な恋物語なのでした。


満足度:★★★★☆
★5つけちゃうか悩むけど~~~う~~~ん★4。文章自体の好みは普通だったからね。それで★4。有川氏が実力のある作家だということはわかったけど、他作品を読むかは未定。結構ボリュームあるから。

「砂漠のボーイズライフ」、感想。

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あらすじ
果てのない砂漠(ここ)には、蜃気楼の美女しかいない。
人生の潤いが枯渇した場所。それが――

男子校、だ。
頭髪の自由はなく(例外あり)、携帯電話は悪の枢軸で、もちろん華やかな青春なんて皆無。三年間、僕らが進み続けるのは砂の海。そう、『砂漠』というわけだ。
そんな男子校に、訳あって集ったのは、全く意味のないイケメンフェイスを持つ長髪野郎、モンゴルから柔道のために
砂漠に来た留学生、高校生の代名詞である丸坊主の元・野球少年、そして、そんな悪友たちと青春を謳歌する僕だ。
四人が歩くその先には、無限の砂漠と蜃気楼の美女しかいない。
今日も僕らの雨乞い(ボーイズライフ)が始まる。


タイトルのボーイズライフを「ボーイズラブ」に空目しそうになる小説第一位。砂漠のボーイズライフです。今作も例によってはまぁ入間だし……という理由で手に取った部分はあるんだけど。立ち読みで出だしの一文にがっと掴まれたので購入しました。

『志望校に落ちたことを聞いて泣く両親を見て、あぁ僕はここで格好をつけないといけないんだなと思った。』

この一文。なんか惹かれません? 後々の展開。というか、主人公のこれからの性格や内情を決める部分でもありますし。最後まで読んでからこの一文読むと、菊原という人間の方向性と性格をよく表したものなんですよね。まぁ入間は絶対この書き出し書いた時そこまで考えてなかったと思いますけど。

で、今作全体を通しての感想ですけど。なんとなく僕は、この作品を「男子高校生の日常」的なノリを求めて読み始めたんですけど。そこまで振り切れてなかったですね。淡々とした話ですし、男子高校の日常部分に寄り添った話でもギャグテイストの話でもないですし。至って真面目な話です。男子高校生達が集まってバカする話……っていうのとまた違うんですよ。一章部分だけ読むとそうなんですけど。最終的にこの物語で描きたかったことっていうのは、「受験に失敗したという人生の欠損を、他の何かで埋めようとするお話」なんですよね。砂漠と称される男子校で、オアシス(自分のやりたいこと)を探すことで。

物語自体は起伏もなく、まったりとしたものなんですけど。終盤。中口に心情を吐露した辺りから今までのシーン全てに意味を感じられて、菊原の本音に寄り添えた気がします。イマイチ真意がわかりづらく、本音を隠す男。菊原。でも最後には、色々と折り合いをつけられたのかなって。

あ、あとな。相地が謹慎中飯食いに言った中華料理屋って安達さんのバイト先だったりする? 時系列は分からんけどありえそうだよなぁ。あとがきでもちらっと安達としまむらについて触れてるし。ま、そこは好きなように想像しろってことですな。


満足度:★★★☆☆

「サブマリン」、感想。

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あらすじ
『チルドレン』から、12年。家裁調査官・陣内と武藤が出会う、新たな「少年」たちと、罪と罰の物語。

皆様あけましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいします。さて、明けてしまいました。2017年。去年はラノベ10選を出来なかったのが心残りといえばそうですが、あまりラノベを読んでなかったのでしょうがないですね。僕もそろそろラノベ卒業なのかなぁ。

という訳で。新年一発目。トップバッターを務めるは一般文芸です。前回チルドレンを読んで、陣内というキャラを気に入ったので。また陣内さんの出番が読めるとなれば買うしかないでしょう。

今作では前作以上に武藤と陣内さんの会話のテンポが自然で、小気味良い感じでした。でもそれは陣内さんが前作よりも丸くなったというか。大人しくなったからかなぁなんて。相変わらず破天荒な人柄ですけど、割りとまともなこと言ってますしね。ただひとつ気になったことといえば、僕はどちからかといえば陣内さんの相方は鴨井だと思ってるので。鴨井の出番がなかったのは残念かなと。優子や永瀬は出ていたのに。もしかして死んじゃってたり……?

さて、鴨井の心配は一旦置いておいて。今作のメイン。というかテーマのようなものはを語っていきましょう。今作のテーマは「加害者にも事情があるということ」「復讐の善悪」の2つでしょう。チルドレンよりも一層少年事件というものに深く切り込んだテーマっすよね。加害者が悪いのは当然だけど、それにだってやむを得ない理由があるかもしれない。だからこそ紋切り型に処理する訳にもいかない。この話を読んで秋葉原通り魔事件を思い出しました。あの事件の加害者も、家庭環境によって歪められた被害者ですから。勿論加害者側は罪を償わなければいけないことに変わりはありませんけどね。世の中ってのは理不尽なんです。悪いことが連鎖して、被害は広がっていくんっすよ。

そして今巻の事件で加害者側にあった事情は復讐というもの。被害者となった友人は死んだのに、加害者の元少年はのうのうと暮らしている。そんなの許せませんよねっていう。実際は加害者側も罪を背負い懊悩と生きている訳ですが。そんなの被害者側は知るわけないんですよ。そしてその被害者側が今度は復讐のために加害者へと転じる。まさに負の連鎖です。

悪人に報いを与えては何故ダメなのか? 悲痛な叫びだと思います。でも切実ではあっても正しくはないんでしょうね。今巻の話は若干のやりきれなさを覚える、罪と罰のお話でした。加害者の人間は幸せになっちゃいけないのか。被害者の人間は怒りを噛み殺して生きなければならないのか。少年法について考えさせられるお話です。


満足度:★★★☆☆
来年はラノベ読むぞ~。
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