「佐藤さん」、感想。

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あらすじ
除霊から始まった――「僕」と「彼女」の奇妙な関係

僕は、「佐藤さん」が怖い。ナイフを持っているわけではないし、不良でもない。ごく普通のクラスメイトの女の子を僕が怖がる理由は、彼女に憑いているアレのせい――。気弱な高校生の僕と、佐藤さんの不思議な関係は幽霊から始まった。青春時代のみずみずしさがあふれる第44回講談社児童文学新人賞入選作。


作家の知り合いからオススメされて読んだ今作。ストーリーラインや文体的に一見ライトノベルっぽいですが、全然別物ですね。昔のライトノベルならこういうのもありそうだなーと少しは思うけれどやっぱ違うんです。今のライトノベルと全然違うのは言うまでもなく。ライトノベルの歴史全体としてみてもこの作品はやっぱライトノベルというものではないのでしょう__。

とまぁ当然のことをいきなり語った訳ですが。区別的に児童文学なのですから論ずるまでもないわけですはい。いやー、しかしこれが児童文学とライトノベルの違いだよなーと。児童文学の方がよっぽ大人な感じがするよ。瑞々しい感性と確立した芯があるね。もしラノベ作家に同じストーリーラインで書かせても何一つとして心に残るものがない、陳腐で無為なものが出来上がるだろう。

これは幽霊というフックによって描かれるリアルな少年少女達の戦いの物語だ。高校生たちが戦う舞台は異世界なんてものじゃないし、モンスターでも異能力者でもない。ただそこにある現実こそが身に迫る問題なんだ。それぞれが抱えた心の傷に向かい合って、それを克服していく。この物語には作者が描きたいと思ったテーマが“作品”という形でちゃんと表せている。しかもこの作品が書かれたのは作者が中学三年生の頃だったというから驚きだ。

僕が中学3年生の頃なんて、まともな小説一本だって書けやしなかった。文章面でも、テーマでも、構成でもストーリーでも。兎に角。何一つとして僕は当時の彼女に勝てる部分はなかっただろう。というより、比べるのも烏滸がましいレベルだろう。長編一作どころか短編一作すら書き上げることが出来ていなかったのだから。今はどうかと言われると……どうなんだろう。僕自身は彼女より面白く質の高い小説を書けてる自信がある。全てに於いて勝てる自信はある。でもそれは、僕の自己評価によるものでしかないし、客観的に観ればやはり同じ土俵にもまだ立てていないのだろう。でもいつかは立ってみたいと思う。僕は彼女に勝ちたいんだ。自分の小説を使って。それがいつになるかはわからないけど。僕自身はもうとっくにプロとしてやっていける自信がある。だって、自分一人くらい自分を信じてやれなきゃ。そもそも小説を書くこと自体無意味じゃないか。


満足度:★★★★☆
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「騎士は恋情の血を流す The Cavalier Bleeds For The Blood」、感想。

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あらすじ
「怖いのは人間をやめようとしている、世界のすべてを敵に回してでも“突破”しようとする者だけ。もしもこれがそうなら、私たちでは歯がたたない――」
葛城貴士は、蛇口をひねるようにして、他人の血液を弄ぶ。世界一有名なバンドの歌になぞらえて『プリーズ・ブリード・ユー』と名付けたその能力を駆使し、幼なじみの七ノ輪ほのかを“不敗のカリスマ”と呼ばれる売れっ子タレントへと仕立てあげていた彼だったが、そんなほのかの出来すぎた快進撃が世界の裏側に潜む“とある組織”の調査対象となってしまう――。上遠野ミステリーの傑作<しずるさんシリーズ>入門編となる、熱く苛烈な恋の物語。「しずるさん」はここからはじまった!


前回言った通り。しずるさんとよーちゃんの出会いの物語だという恋情の騎士を読んだ訳ですが。これを本当にしずるさんシリーズといっていいのかってくらい別物でした。まぁ、一応しずるさんとよーちゃん出てくるし出会いの物語ではあるんだけどさ。一般的に想像されるような出会いの話じゃないんだよね。そもそも二人が出てきたのも終盤だし。メインの部分はしずるさんとよーちゃんの話じゃなくて、カナリアと異能者達のお話かなって気がする。ようは誰にも負けない異能を持つ少年は、負けないんじゃなくて負ける勝負をしてこなかっただけ。そんなお話。

っていうかブギーポップだよねこれ。まぁ面白かったからいいんだけどさ。普通に本編より面白かったけどさ。これが上遠野ワールドの真髄って奴か……。一風変わった異能とこじれた人間関係。異能自体を見せるというより異能によって形成された人間を描くって感じだよね。異能バトルも直接ぶつかりあう感じじゃなくて腹の探り合いというか。如何に正面から戦わずに勝つかって感じだし。なんとも独特。でも話の筋だけはシンプルで盛り上がるものだった。上遠野はしずるさん本編もこの方向でいけばよかったやん……。

まぁ、それはそれとして。しずるさんって本格的に異能者っぽいよな。能力は分からんけど。よーちゃんも只者じゃないよなぁ。よーちゃんの背景とかハッキリして、しずるさんの現状にも決着がついたりするのだろうか。


満足度:★★★★☆

1巻→「しずるさんと偏屈な死者たち」、感想。
2巻→「しずるさんと底無し密室たち」、感想。
3巻→「しずるさんと無言の姫君たち」、感想。

「しずるさんと無言の姫君たち」、感想。

1巻→「しずるさんと偏屈な死者たち」、感想。
2巻→「しずるさんと底無し密室たち」、感想。

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あらすじ
よーちゃん、人は死ぬものよ。それはたとえ、どんなに綺麗なお姫様であっても例外ではない。
「人はなぜ物語を必要とするのかしら?」「え?」「それはきっと、現実の世界というものがあまりにも意にそぐわないものだから、でしょうね――」
今回、“深窓)の美少女”しずるさんと好奇心旺盛な“わけありお嬢様”よーちゃんが挑むのは、4人の“お姫様”たちの悲劇。白雪姫は雪に舞い、人魚姫は海に伏し、眠り姫は頭を砕かれ、赫夜(かぐや)姫は竹刺しにされる……。これは、美しくも悲しい、みっつ目の事件簿。新装版にして完全版、星海社文庫版しずるさんシリーズ第3弾!


今巻はなんだか謎解き要素よりもふわっとした哲学的な部分がメインだったように思えます。夢や願望について禅問答するお話……だったのかな。なんだか杳として掴みどころがなくて僕にはよく分からなかったかな。今までにも増してなんだか硬くて難解だった今巻。しずるさんの正体もよく分からなくなってきた。ただの病気で入院してるって訳じゃなさそうっすね。次は四巻よりも過去編を先に読もうかなぁ。


満足度:★★☆☆☆

「ニーナとうさぎと魔法の戦車」、感想。

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あらすじ
戦災によって放浪の身となった少女・ニーナ。ある日、彼女は結婚式会場から食事をくすねようとしているところを見つかってしまう。警察に突き出されることを覚悟したニーナだったが、魔動戦車とともに現れた少女たちによって赦される。彼女たちこそ、戦争が生んだ災厄・野良戦車から街を守る私立戦車隊…通称・首なしラビッツのメンバーだった。そこに野良戦車の襲撃を知らせるサイレンが鳴る。かつて戦車に乗っていたニーナ。そして砲手がいないラビッツ。ラビッツの戦車長・ドロシーはメンバーたちに向かって言い放った。「たった今、新しい砲手が見つかった!」第9回SD小説新人賞大賞受賞作、堂々登場。

ええー!?あの『結城友奈は勇者である』のキャラデザを担当したBUNBUNさんが挿絵を担当するおすすめラノベがあるって!?それはなんて作品なんだい?薔薇のマr__そうか!ニーナとうさぎと魔法の戦車だね!早速買ってくるよ!

という訳でやっとニーナを読みました。うづきくん!今迄スルーしててごめんね!前から気になってたけどなぜか読んでなかったよ!あとすみやきくんが先に受賞してたのはびっくりです。すみやきくんの本が早く店頭で並んでいるのを見たいです。

正直なこというとね。僕流星生まれのスピカ一巻途中で読むのやめてるからね。うづきくんの作品合わないんじゃ……なんて懸念してたけどね。杞憂に終わったよね。もうね、最高。お手本にしたいレベルでよく出来てた。百合的には微百合くらいなんだけどさ。兎に角ニーナちゃんが可愛いんだわ。主人公を純粋に好きになれるっていうのは読み進めていく上で1番のモチベになる。ニーナ自身の境遇や心情の推移も丁寧だしね。首なしラビッツの面々も皆良いキャラしてるし。っていうかメインキャラ一気に出たなーと思ったのに誰一人としてキャラが埋もれてないのが凄い。全キャラの魅力をちゃんと引き出してたよね。魔法戦車っていう発想もいいし、敵が戦争そのものっていうのもいい。ドロシーの「悪意に対し善意で相対する」というスタンスも素晴らしい。テーマがブレずに一冊で綺麗にまとまってたのはさすがとしか言い様がない。

ただ一つ気になった部分は、これだけ主人公の心情によりそって。等身大で描写できているなら一人称で書けばもっと良くなったんじゃないかなって。

ということで僕としては大変満足出来るものとなりました。続きも早速買ってこようと思います。皆さん。これはちゃんとお金を払う価値のある小説ですよ?貢ぎましょう!

……なぜスピカでこのクオリティを出せなかったんだろうな。やっぱりあれか。百合じゃないからか。おい編集。うづきくんに百合を書かせたってくださいよ。サークルでも百合小説出してるけど、どうせならもっと多くの人に読んでもらいたいに決まっとるやないですかっ……!


満足度:★★★★☆


2巻→「ニーナとうさぎと魔法の戦車〈2〉」、感想。
3巻→「ニーナとうさぎと魔法の戦車〈3〉」、感想。
4巻→「ニーナとうさぎと魔法の戦車〈4〉」、感想。
5巻→「ニーナとうさぎと魔法の戦車〈5〉」、感想。
6巻→「ニーナとうさぎと魔法の戦車〈6〉」、感想。
7巻→「ニーナとうさぎと魔法の戦車〈7〉」、感想。
最終巻→「ニーナとうさぎと魔法の戦車〈8〉」、感想。
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Author:東 京人
感想は主にラノベが中心。ライトノベルとは本格的に読み始めて9年の付き合い。初めて読んだのは12年前くらい。好きなジャンルは百合とゼロ年代だけど、面白そうなら何でも読む。基本文を書くのも妄想するのも何かを作ることも好きなので、自分で小説とかも書いてたりする。

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