「犬の心臓」、感想。

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あらすじ
吹雪の夜、病院の匂いを身にまとった優雅な紳士と出くわした野良犬は、満ち足りた生活を送ることになるが…。奇怪な想像力が炸裂するアンチユートピア小説、復刊。

僕個人としてはロシア文学はどちらかというと苦手なのだけど。SF小説自体は割りと好きだし、犬の心臓も有名な作品の一つだと考えているので読まない訳にもいかないよなぁということで読ませて頂きました。

人の脳下垂体を犬に移植するとかいうおもっきしグロテスクなあらすじに惹かれて……というのもアレですが。兎に角キャッチーなあらすじであることには変わりないです。その犬がその後どうなるのかなーと思いつつ読み始めた訳です。

で、前半はニヒルだけどどっか憎めないシャリクの視点で物語が進んでいきます。人間以外を視点に据えた物語というのは、日本でも昔からありましたね(宮沢賢治とか夏目漱石とか)。普通なら犬がこんなにまともな思考が出来るのか?という固定概念を抱きますが。読み進めていけばそんなもの直ぐに氷解していきます。物語は面白ければ良いわけですから。

シャリクの視点で進められる前半部分は素直に面白いですね。シャリクのキャラがいいというか、親しみ易くて癖になります。しかし後半になると雰囲気は一変します。和やかだった空気が一気にオドロオドロしいモノになります。

脳下垂体と睾丸を移植する手術の描写自体グロテスクなんですけど、その後のシャリクが人間に近付いていくところも不気味です。若返りの為の実験で、犬を人間にしてしまう。後半のシャリクがシャリコフになり、人権を主張し教授に反抗するようになっていく所は革命の暗喩なのかなと思ったり。僕としては食わせて貰ってるんだから大人しく言うこと聞いておけよと思ったり。素直で可愛げがあった分シャリクの方がいいですね。後半は正直陰鬱としていて苦手です。こっちがメインの筈なんですけどね。シャリコフの性格が気に入らないせいかあまり楽しめなかったのかな、と。

にしてもシャリコフという人物にどの程度シャリクの部分が残ってるんでしょうね。人格的には脳下垂体の主がメインだとは思うんですけど。途中までは確かにシャリクの部分が強かった気がするので。いつの間にかシャリクの部分が塗りつぶされてしまったんでしょうか。

最後の方はシャリコフからシャリクへと推移していってますが、あれはシャリクの脳下垂体を移植しなおしたってことでいいんですかね。僕はそういう認識で居るんですけど。

最後に二つ程。個人的に気になったことなんですが。「セヴィリアからグラナダへ」っていうのがよく分からないんですよね。調べても何のことか出てこないし。あと、人物の名称が所々変わるので混乱しちゃいますね。ロシア人の名前は唯でさえ馴染みがないんですから。


満足度:★★★☆☆
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「ソーネチカ」、感想。

ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)
(2002/12)
リュドミラ ウリツカヤ

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あらすじ
本の虫で容貌のぱっとしないソーネチカは、1930年代にフランスから帰国した反体制的な芸術家ロベルトに見初められ、結婚する。当局の監視の下で流刑地を移動しながら、貧しくも幸せな生活を送る夫婦。一人娘が大きくなり、ヤーシャという美少女と友達になって家に連れてくる。やがて最愛の夫の秘密を知ったソーネチカは…。神の恩寵に包まれた女性の、静謐な一生。幸福な感動をのこす愛の物語。

文学小説は、基本的に日本文学を中心に読んでいるのだが。偶には趣向を変えてロシア文学でもと思い手にとった作品。ロシア文学の性質については多少知っているとはいえ、ぼんやりとしたイメージしかないのでどんなものかと読み始めたのだが。結果的にいえばかなり僕の好みに合致する作品となった。ロシア文学が僕の趣向に合致したというよりは、この作者さんの作品があってたのかなと個人的に思う。

この作品の事前知識は、凡庸で本の虫である主人公が幸せに生きた作品程度のものしかなかったが。内容は予想を裏切り期待を越えるモノとなっていた。この物語はストレートにソーネチカという人物の人生をそのまま本にしたような内容だ。人によっては退屈に思えるモノかもしれないが、中々に激動のモノだったと個人的に思う。

ロシア文学は時代背景に人生を左右されるものという印象が強いが。個人的に僕がこの作品でソーネチカの人生を揺るがしているのは時代背景などではなく。ソーネチカが関わる人物にあると思う。夫であるロベルト。娘のターニャ。そしてヤーシャ。簡潔にいってしまえば、夫の浮気(しかも浮気相手が養子にとったヤーシャ)と死別がソーネチカの人生に於ける大きな不幸といえるのだが。その二つを経てもソーネチカが自身が幸せだといえるところ。夫を最後まで愛し続けるところが哀しくも特異な部分といえるのだ。自分以外の人物が皆成功しそれぞれの幸せを得ていくのもソーネチカと対照的で、よりソーネチカの悲哀さを際立たせる。

そんな特異な性質をもつソーネチカだが。この物語で一番面白く話を盛り上げてるのはターニャとヤーシャの関係ではないかと思う。肉体的ではなく精神的な面でヤーシャを好きになるターニャ。しかしヤーシャには暗い過去があり、現在も暗い関係を続けている。二人の関係は不思議なモノであると思う。一言で言い表せない関係というか。ヤーシャも最終的にはロベルトとくっついてしまうし……。非常に興味深く研究しがいのある心裡だと個人的に思う。


最後にこの話はソーネチカを主人公にした話だと言われてるが。正確にはソーネチカを軸にした群像劇ではないかと思う。ソーネチカというキャラと同じかそれ以上に他のキャラも描かれていることからそう判断できる。個人的にはヤーシャが一番好きですかね。孤児院での過去を経ても強く生きている様は惹かれるモノがある。



とまぁ長々と語った訳だけどね。
文学小説に百合を見いだせて気分は最高!!って訳。
斜陽でも「おうふwwww母娘百合ですぞwww」とかテンション上がってたしね。思わぬ僥倖。

ヤーシャちゃん×ターニャちゃんの薄い本が読みたいです。本編ではレズセックスしなかったからね。


満足度:★★★★☆
個人的に暗い雰囲気の百合で桜庭的アトモスフィアを嗅ぎ取りました。

「星の王子さま」、感想。

星の王子さま (新潮文庫)星の王子さま (新潮文庫)
(2006/03)
サン=テグジュペリ

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あらすじ
これまでで最も愛らしく、毅然とした王子さまが、優しい日本語でよみがえります。世界中の子供が、そして大人が読んできた。世紀を越えるベストセラー。

砂漠に飛行機で不時着した「僕」が出会った男の子。それは、小さな小さな自分の星を後にして、いくつもの星をめぐってから七番目の星・地球にたどり着いた王子さまだった……。一度読んだら必ず宝物にしたくなる、この宝石のような物語は、刊行後六十年以上たった今も、世界中でみんなの心をつかんで離さない。最も愛らしく毅然とした王子さまを、優しい日本語でよみがえらせた、新訳。


夏といえばSF……という訳で書店のフェアで取り上げられていた名作を今更ながら読ませていただいた。

本作は、子供に向けて書かれた作品だと冒頭で述べられているが。僕としては寧ろ大人にこそ読んで欲しい作品であった。何か大事なことを忘れてきてしまった大人にこそ。この本を一度手にとって、童心を振り返っていただきたい。

さて、この作品。内容について語ってくれと言われるとどうにも語りづらい。というか説明しづらい。だからこそ文学であり、それがこの作品の魅力であるのだが。ただ、この作品を読んで僕が感じ取ったことを無理矢理書き起こすとするならば。人の本質を観る物語なのかな、と思った。シンプルで、淡々とした物語と構成だからこそ。詩的な文章がすっと心に染みてくる。この本では、難しい理論は何も出てこない。それなのに星の王子さまが語るモラルには深い含蓄が込められている。

ストーリーラインに触れるならば。物語としてもまとまっていて、王子さまとの出会いや王子さまが行き会う人々との交流など。ドキドキしたり興味を惹かれる部分も沢山ある。それにラストの切なさも物語の締めとして綺麗だ。テーマ性だけでなくストーリーとしての完成度も高いといえる。

大人の視点でみれば。色々と矛盾点や指摘したい部分も出てくるだろう。「こんな子供だまし」と鼻で笑う人もいるだろう。でも僕は、そういう人の気持も理解できる。実際自分で物語を作るならこんな穴だらけの話は許せないから。でもこの作品は、そんな矛盾点なんか些細なものだと切り捨ててしまえるだけの魅力があるのだ。

自分にとって本当に大切なモノは、数字では測れない




満足度:★★★★★

「銀河鉄道の夜」、再読。

新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)
(2012/07/01)
宮沢賢治

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あらすじ
貧しく孤独な少年ジョバンニが、親友カムパネルラと銀河鉄道に乗って美しく哀しい夜空の旅をする__

秋です。読書の秋です。皆さん本を読みましょう。ということで僕も読みました。別に読書の秋だから読んだのではなく僕の場合は自分で書いてる小説に銀河鉄道の夜のパロが出てくるので読み返しただけですが。

兎に角綺麗で幻想的で繊細な文章ですよね。この作品。
いつまでも銀河の海を旅していたい気持ちになるといいますか……そしてラストの儚さとか寂しさ。夢の様な話と現実的な結末。こういう作品を書けるようになりたいなぁと思いました。
やっぱ昔の文学作家さんの中では宮沢賢治が一番好きですね。表現が綺麗で思わずトリップしてしまいます。

さて、この本を初めて読んだのは中学生の頃だったわけですが。やはり当時と比べて感じるものは全然違いますね。当時の僕の印象なんて「読み辛いなぁ……」っていうだけで全然面白さがわかりませんでしたから。寧ろ銀河鉄道の夜は比較的読みやすい文章なんですけどね。当時の僕には想像力が欠如してたり、後文章の魅力ってものが分かっていなかったんだと思います。今でも偉そうな事言えるほど分かるわけではありませんが。それでもこの本を読んで感動して面白かったといえるくらいには、経験が僕を成長させてくれたっって事だと思います。



満足度:★★★★★
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東 京人

Author:東 京人
感想は主にラノベが中心。ライトノベルとは本格的に読み始めて9年の付き合い。初めて読んだのは12年前くらい。好きなジャンルは百合とゼロ年代だけど、面白そうなら何でも読む。基本文を書くのも妄想するのも何かを作ることも好きなので、自分で小説とかも書いてたりする。

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