「ウォーター&ビスケットのテーマ1 コンビニを巡る戦争」、感想。

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あらすじ
「ヒーローになるつもりですか?」「違う。僕はお姫様になりたい」闘うより、護られたい―臆病であることを誇る高校生・香屋歩と幼なじみの秋穂栞が迷い込んだのは、8月がループする街“架見崎”だった。ここを訪れた人々は任意の特殊能力を与えられ、乏しい物資を巡る戦争を繰り広げていた。だが、ふたりが希望した能力は戦闘の役に立たないもので…。生存戦略に反則はない。ルールブックの穴をつく、臆病者の戦いが始まる。

サクラダリセットコンビの新作。サクラダ自体はアニメも観てないし原作も未読なんだけど、タイトルと梗概に妙に惹かれてしまった。ウォーター&ビスケットってなんのこっちゃ? って感じだし。コンビニを巡る戦いって規模小さくね? と思ったり。あと梗概のループする閉塞的な街って設定とか。僕はお姫様になりたいっつー惹句とか。面白くなりそうな予感がビンビンする。

実際作中作の「ウォーター&ビスケット」がいい味出してるし、香屋のキャラもいい。自身の身の安全の為に「世界平和創造部」なんて回りくどく壮大なモノまで作ってしまう臆病っぷり。日常の中にあっても平穏を得られない少年は、非日常に於いてこそ最高のパフォーマンスを発揮できる。「世界平和創造部」、後々も登場しそう。

序盤は香屋の異常なまでの“臆病っぷり”に惹かれ、バトルロワイヤルが始まってからも香屋が選んだ“ルール外の能力”が気になって一気に読んじゃいました。アズチ戦終わるまでノンストップで楽しめましたね。アズチ戦の途中で能力を使うのかと思えばそんなこともなく、香屋が選んだのがマジで戦闘に一切関係なく。それどころか使えるタイミングもごく短いっていうのがツボですよね。運営者に質問できる能力なんて、この世界で“勝ち抜く”だけなら非効率ですもん。

やっぱり能力モノは万能だったり汎用性高かったり純粋に強くてチートだったりする能力よりも。一見「それ使えんの?」って感じだったり使い方が分からない能力のほうがワクワクしますよね。能力でなく使い手であるキャラ自体に価値と魅力が出る。
実際香屋の能力なんて戦闘中に使えないですし、まさに捨て身の選択。生存率を上げるだけなら自身の肉体を強化した方がまだマシだ。それでも香屋は「生きることにだけは、命を賭けてもいい」という信条のもとこの能力を選ぶ。

そしてアズチを退けた後。平穏な国、ミケ帝国、ウォーターことトーマの思惑が絡んだりして中々複雑な展開を見せます。
それでも香屋の目的としては
・この世界が何なのか調べる
・この世界で死んだ場合の真相
・トーマに勝つ

ってのが現状の目的ですかねぇ。これはあくまで香屋の物語なんで、今回スポットがあたってたキネマ倶楽部は吸収か崩壊しそうですけど。

最後。完全に男だと思ってたトーマが実は女の子ってのが明かされて、その事実がどう効いてくるのか。そしてトーマに刺された香屋は無事なのか。それすらも思惑通りなのか……。次巻に続く。


満足度:★★★★☆
久々に新しく追ってもいいと思えるシリーズ。2巻も買お。
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「エスケヱプ・スピヰド」、感想。

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あらすじ
昭和一〇一年夏、廃墟の町“尽天”。暴走した戦闘兵器に襲われた叶葉は、棺で眠る不思議な少年に出会う。命令無しに動けないという少年に、叶葉は自分を助けるよう頼む。それは、少女と少年が“主従の契約”を結んだ瞬間だった。少年は、軍最強の兵器“鬼虫”の“蜂”九曜と名乗った。兵器ゆえに人としての感情が欠落している九曜だが、叶葉はそんな彼を一人の人間として扱い交流していく。徐々に心を通わせていく二人。しかし平穏な日々は、同じ鬼虫である“蜻蛉”竜胆の飛来によって打ち砕かれ―!?閉じられた町を舞台に、最強の兵器たちが繰り広げるノンストップ・アクション。

作者が瑞っ子という噂を聞き、発売当初から気になってはいたんですが。なんだかんだと後回しにしていたのをやっと読了。物語としてはバトルがウリのアクションモノ……というよりは。叶葉との交流も確り描いてましたし。戦いが終わったあと、戦闘兵器の存在意義とは? とか。機械が人間としての感情に感化されていくところなど。“機械”と“人間”の差異。又は各々の存在意義をテーマにした作品だったと思います。

そういったテーマ性からは、なんとなく「誰よりもやさしいあなたのために」を思い浮かべましたね(こっちは機械じゃないけど)。

この作者さん。文章力も充分高いですし(秋山先生っぽかったかと言われるとジャンルも違うので判別し辛いが)、構成も上手い。バトル描写自体も迫力たっぷりに書けてますしね。大賞に相応しい完成度だったといえるでしょう。

しかし、それ故に。続巻が気になる感じではないんですよね。物語として一巻で綺麗に纏まってるので。あと、キャラとか世界観とか。雰囲気があっていいんですけど、僕にはそこまで刺さらなかったという。

昭和風架空戦記とかが好きな人なら堪らない作品なんじゃないかと思います。


満足度:★★★☆☆

「スーパーカブ」、感想。

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あらすじ
山梨の高校に通う女の子、小熊。両親も友達も趣味もない、何もない日々を送る彼女は、中古のスーパーカブを手に入れる。初めてのバイク通学。ガス欠。寄り道。それだけのことでちょっと冒険をした気分。仄かな変化に満足する小熊だが、同級生の礼子に話しかけられ―「わたしもバイクで通学してるんだ。見る?」1台のスーパーカブが彼女の世界を小さく輝かせる。ひとりぼっちの女の子と世界で最も優れたバイクが紡ぐ、日常と友情。

某所で名前が上がってたので、例のごとく百合目当てで購入。しかし結果として、百合目当てに読むもんではないなと。まぁ、そのことについては後々触れるんだが。ぶっちゃけて言ってしまえば、僕的にこの小説はつまらなかった。

話としてはないない尽くしの少女が、カブと出会ったことにより行動範囲。ひいては世界すらも広げていくという内容なのだが。凄い淡々とした話だし、山場といえるものはない。だからといって文章や世界観、設定で魅せるタイプの話でもない。物語とは、如何に読者の感情を揺さぶれるか。または牽引できるか。そして登場人物自体の心情推移を描けるかだと思う。この小説には、それが薄い。勿論、子熊はカブと出会って確実に成長してるのだろう。しかし、文章や性格も相俟って感情が分かりづらい。礼子との交流も、友情をメインに据えてる訳でもないのでそこまでピックアップされない。

いってしまえば、自分には刺さる部分がない小説だった。勿論刺さる人には刺さるのだろう。物語のウリとして、カブ乗りには共感できるお話なんだろうし。ただ自分は、カブ。ひいてはバイクに思い入れもなく。免許も身分証明の為に取った車の免許ぐらいしかない人間だ。彼女と共感できる部分は、あまりない。


満足度:★☆☆☆☆
別に★2くらいくれてもいいんだけど。そもそも今迄僕の中で★1つくような作品ってほぼ存在しないし、それってもう読んでて不快とかいうレベルじゃね? と思ったので。読んでて不快なレベルだったらそもそも最後まで読まんのでレビューも書かん。だからここらで採点を厳しめにしようかと……。

「緋紗子さんには、9つの秘密がある」、感想。

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あらすじ
学級委員長を押し付けられ、家では両親が離婚の危機。さらには幼なじみへの恋心も封印中。自分を出せない性格に悩みが募る高校2年生・由宇にとって「私と誰も仲良くしないでください」とクラスを凍りつかせた転校生・緋紗子さんとの出会いは衝撃だった。物怖じせず凛とした彼女に憧れを抱く由宇。だが偶然、緋紗子さんの体の重大な秘密を知ってしまい、ふたりの関係は思わぬ方向へ――。

緋紗子さんの秘密をひとつひとつ解いていくうちに、見えてくる本当の大切な秘密とは?


某所で前々から名前が上がってたのを今更読了。いや~よい青春小説であった……。読み終わったあと「最高かよ……」って呟けたのは久しぶりだよ。仄かにゼロ年代ジュブナイルのかほりを感じたけど、こっちはあくまで青春小説。リアルな中高生の心情を表現した作品ではあるけど、ゼロ年代ジュブナイル特有の倦みとかはなかったかな。なので結構さっぱり。読後感爽やかよ。

内容としては「私と仲良くしないでください」なんてインパクトある自己紹介した緋紗子さんに主人公由宇が惹かれていって。関わっていく内に緋紗子さんの秘密を次々知っていくというもの。憧れから始まった友情百合ですな。由宇自身の性格や家庭の問題も織り交ぜつつ、緋紗子さんと親交を重ねていく。そして最後には、緋紗子さんと出会う前と比べて少し成長した由宇が。緋紗子さんに本音をぶつける。

おっちゃんね。少年少女の成長物語大好きだからね。しかもこれストーリーラインとんでもなく綺麗な友情百合だからね。話の綺麗さなら薄墨桜と同じレベルだよ。ラストの告白シーンとか最高すぎて悶ちゃったし、エピローグも希望のある未来って感じで最高。今の季節に読むのにぴったりだよ。

物語を牽引するキーとなる緋紗子さんの体質。「幸せになると石になる」ってあれね。緋紗子さんの心情顕著に表してるし、もう読んでる途中緋紗子さんが石になる=由宇と一緒に居て嬉しいんだなぁって分かってにっこりしちゃうね。どんなにつっけんどんな態度取ってても、心裡では最初から由宇に対する好感度高いんだよなぁ。

修一もさり気ない気遣いが出来るいい男だし。薫ちゃんも僕的にはリアルな女子高生って感じで好きなんっすわ。根は悪くないんだなぁってのが分かっちゃう。

青春は尊いし高校生の一瞬が如何にかけがえのないものだったか思い出させてくれるよな……。郷愁に浸っちゃうわこんなん。

最後の秘密とかもね、卑怯だよね。緋紗子さん割と由宇に一目惚れじゃね? って。エピローグ読んでやっとプロローグのシーン分かるしね。表紙とかもクライマックスシーンっすよこれ。

はぁ~最高~~~……マジ無理。


満足度:★★★★☆
久々に良い読書しましたわ。ぶっちゃけ★5でもいいかなとも思うんだけど……う~ん★4.5!!!

「最後にして最初のアイドル」、感想。

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あらすじ
“バイバイ、地球―ここでアイドル活動できて楽しかったよ。”SFコンテスト史上初の特別賞&42年ぶりにデビュー作で星雲賞を受賞した実存主義的ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSFの表題作をはじめ、ガチャが得意なフレンズたちが宇宙創世の真理へ驀進する「エヴォリューションがーるず」、書き下ろしの声優スペースオペラ「暗黒声優」の3篇を収録する、驚天動地の草野原々1st作品集!

色々と鳴り物入りで登場した今作。新進気鋭の作者の経歴は、SF界と文壇両方に旋風を巻き起こした。ラブライブのにこまき同人誌を原案にした作品が小説家デビューに繋がるというだけでも驚きだが、それで星雲賞まで掻っ攫うんだから大したものだ。話題性という意味では正しく一等星。

一応作者的には百合にカテゴライズされる作品群らしいので、まぁ読まない訳にはいかんわな。

という訳で読んでみた訳なのだが。予想以上にSF的要素のアクが強い。というか癖が強い。此方の理解をねじ伏せるかの如き情報量の多さだ。正直読んでて疲れてくる。でも何故だろう。あまり意味を理解してなさそうなのに読めてしまう。これもパロネタの親しみやすさ故だろうか。

一作目の表題作は周知の通りにこまき同人誌が元ネタ。スケールがでかくなるにつれてアイドルとはなんだろうと考えさせる内容だ。捕食も虐殺もアイドルだけど、やっぱり最後はファンあってのアイドルだよね! ってとこに帰納するあたり質が悪い。

二作目はけもフレ+ソシャゲを題材にした作品。ソシャゲに宇宙が支配されたディストピアを、まどまぎ的スケールで救う叛逆の物語。けもフレ要素。実はそんなに濃くないのでは……?
話の落とし所としては一番好きというか。納得出来るオチだった。巡り巡った世界で、二人は再び引き寄せられる。道中の絵面がグロテスクなのに最後だけ綺麗。これは魂の百合ですわ。

三作目。声優という記号を用いたスペースオペラ。宇宙航海モノっていうのかな。この話も充分ぶっとんでる筈なんだけど、他と比べて随分マイルドに感じられた。声優核融合爆弾とか声優カラテとか字面だけで面白い。ズルい。サチアカはいいぞ。

ということで。総評としてはこじらせすぎた悪いオタクですわこれ。悪いオタクに知識と才能与えるとこうなるんだなぁ~という典型。どれもそれなりに面白いから厄介だ。


満足度:★★★☆☆
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感想は主にラノベが中心。ライトノベルとは本格的に読み始めて10年の付き合い。初めて読んだのは13年前くらい。好きなジャンルは百合とゼロ年代だけど、面白そうなら何でも読む。基本文を書くのも妄想するのも何かを作ることも好きなので、自分で小説とかも書いてたりする。

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