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「やがて君になる 佐伯沙弥香について」、感想。

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あらすじ
理解でもなく、諦めでもなく、そこにあるのは自分への納得。
――私は、女の子に恋することしかできないんだって。
幼少時代から大人びていて、どこか達観した少女だった佐伯沙弥香。だが小学五年生の時に友達の女の子から自分へ向けられた感情に、彼女は答えを出せずにいた。
そして中学時代。仲の良かった先輩・千枝から恋心を打ち明けられた彼女は戸惑いながらも告白を受け入れ、次第に恋愛の深みにはまっていくが……。
ままならない想いに揺れ動く少女、佐伯沙弥香の恋を描くもうひとつのガールズストーリー。


どうも、紆余曲折あってラノベ編集者になったキョウトです。まぁ、編集者という立場になったところでこのブログの内容は何も変わりませんけどね。これまで通り自社レーベルの作品でもつまらない時はつまらないと書きます。

とまぁ私事はこれくらいにして、今は佐伯沙弥香についてです。入間の百合って時点で当然買うんですけど、更に今話題の「やが君」のノベライズですよ奥さん。やが君は一巻からずっと買っていたので、アニメ化は素直に嬉しかったですね。クオリティも申し分ないですし。

そんなやが君屈指のめんどくさい、というか闇が深そうな女・佐伯沙弥香の前日譚が今作。燈子先輩と出会うまでの、女の子に恋するようになるまでの物語。全体通して恋とは何なのか、恋をするってどういうものなんだろうと考える内容でした。

沙弥香にとっての“恋”とは、最初は「分からない痼りのようなもの」。先輩と出会い、自分自身を変えていくもの。つまり「好きな人の好きな人間に変わっていく」ことと考え方が変わっていきます。この好きな人間の為に変われるっていうのは、先輩の言う沙弥香の優しさなのでしょう。本編での侑ちゃんとの対比にも取れます。侑ちゃんの優しさは「変わらないでいること」。沙弥香の優しさは「変わってしまえること」です。

しかし、そんな沙弥香の優しさを好きだと言ってくれた先輩との恋も終ってしまいます。その顛末は、なんとも呆気ないものというか、「思春期特有の勘違い」なんてありふれた理由で拒絶されてしまいます。振られる理由としては最悪ですよね。まだ単純に他の人が好きになったとか飽きたって言われた方がマシです。柚木先輩が自身の好意と恋心を、「間違いだった」「遊びだった」と思うのは勝手でしょう。でもそれを相手にも押し付けるのは横暴過ぎる。自分の感情を強要するな。沙弥香じゃなかったら完全に人間不信になりますよ。
「こういう私にしたのは、あなたのくせに」の一文が重い。

柚木先輩の考えを否定する訳じゃないけれど、やっぱり酷い人ですよ。小五時代の女の子が純真で、一足先に知った恋心とちゃんと向き合ってた分大人ですね。あの女の子が沙弥香の希望だ……本編にも出ないだろうか。負けヒロインを適当にくっつけとけみたいなものじゃないけどさ、本当に良い子やから……。

こうして、柚木先輩との恋を失敗という形で終えた沙弥香は、もう人を好きにならないと誓って高校に入学します。そして七海燈子に出会い__恋をします。一目惚れです。

恋を恐れ、恋に染まり、恋を拒絶された少女が、また再び恋をする。彼女はどうしようもなく、女の子に恋することしか出来ないのだ。

これは、佐伯沙弥香という人間の半生を描いた物語。そして、これから先彼女が歩む道の基盤。


満足度:★★★★☆
入間とやが君は\ベストマッチ!/だって確信してたよぼかぁ。本編で沙弥香の行く先を見るのが怖くて仕方ないけど、なるべく幸せになって欲しいね……。
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「世界の終わりの庭で」、感想。

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あらすじ
遠い未来、遠い惑星、黄昏を迎えた世界。私は遺跡の発掘物を利用するため、スクラップ工場で働いている。遥か昔に作られた私は、人間より人間らしい見た目で、機械らしさが足りない。ある日、発掘隊が棺めいた箱を持ち帰えると、中には銀糸のような髪に艶のある肌の少女が。瞳を閉じて眠る姿は、一目では機械人形と判断がつかない。彼女の造形を目で追う度、巻き起こる発熱とエラー。非の打ち所のない彼女の姿を前に、「きれい」と口にして、生まれて初めて、私はエラーで動けなくなった。変わり者二人の出会いから語られる、彼方の物語。遙か昔に交わされた約束の行く末を今語ろう。

これはきっと、茫漠とした時の果てにある、運命のお話__。

はい、という訳でかっこつけた惹句から入りたくなる程度には幻想的なお話でした。

僕的にはあんまり久々感もないんだけど、そうはいっても約一年(10ヶ月)ぶりの入間です。まぁあらすじからして百合でしょと推測して買った訳です。

内容としてはあまり自分というものを持ってない女子大生が、偶々空き地で不思議な手のようなものを拾ったところから始まります。見た目こそ人間の手そのものではあるけれど、それは思いっきり異星からの生命体(?)のようなものでして。物言わぬそいつとコミュニケーションを試みつつ、自分の主体性がない人生を一変してくれる存在なんじゃないかと期待して、謎の手__ティフォンとの意思疎通に生涯をかけることになるんですねぇ。そして当のティフォンは遥かな時を経て、機械の身体を手にし、自身の感情を表出できるようになったんっすよ。でもその頃には自分を拾ってくれた彼女はいなくて、更には星の寿命が迫っていて……。ティフォンは他の人類が生存している星に降り立ち、そこで過ごすようになるけれど、そこでも人類は異星の蝶に生存圏を追いやられ絶滅しかけていた。ティフォンは自身のデータを基に再現された、拾い主の姿を模した機械人形を守り地層に埋まる。それから更に時が過ぎ、先に起動していた機械人形がティフォンを掘り起こし__二人は再び相まみえる。

っていう話です。自己解釈だけど。
なんで起から結まで全部語ったかーっつとな。ぶっちゃけ時系列もバラバラだし、話も壮大過ぎて一周目だと分かりづらいくらいだからな。自分でも整理したかったんや。

流れとかは中々ロマンチックで良いんだけどね。何分分かり辛い話ではある。特に入間はSFっぽい話よりも現実に即した話の方がいい。SF書くなら虹色エイリアンくらいが丁度いいな。


満足度:★★★☆☆
読んでる時はそんな面白くはないけど読了後に染みるものがある。そういうタイプの入間だった。

「超人計画」、感想。

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あらすじ
新人作家は悩んでいた。厳しすぎる現実を前に立ちすくみ、ダメ人間ロードを一直線に突っ走る自分はこのままでよいのだろうか?…いや、よくない!!虚無感とルサンチマンに支配された己を変えるには、そうだ!“超人”になるしかないのだ!!「くじけてはダメ、ゼッタイ!」やさしく励ます脳内彼女レイと手を取り進め、超人への道!!『NHKにようこそ!』の滝本竜彦が現実と虚構のはざまに放つ前人未踏の超絶ストーリー。

エッセイ風小説なのか。小説風エッセイなのか。どちらとも言い難い本であった。

滝本竜彦をアダルトチルドレン系ゼロ年代からの刺客として評価している僕ではあるが、氏の小説自体は「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」しか読んだことなかったりする。NHKはアニメしか観てないのだ。

そんな氏のルサンチマン的な自伝エッセイ。まぁなんというか。氏が書いた作品が如何に彼自身を曝け出した内容だったかを思い知らされるエッセイであった。内容としては氏が脳内彼女「レイちゃん」に助言や諫言をされつつ、人間彼女を作り超人になるぞ! というお話。一応これが筋といえば筋なのだが、その方法がどうにも頓珍漢でから回っている。その滑稽さを楽しむ作品でもあると思うものの、自分的には笑えなかった。それは彼の痛々しさ故ではなく。どんなに自身を卑下しても、彼は成功者だ。小説家になれてるし、小説家として生きていけている。大成している。一度成功した人間に、真に敗者を語る資格はない。エッセイ内でのことではないが、結果的に結婚もして彼の目指していた超人とやらにもなっている。ハッピーエンドだ。

エッセイなのだからあまり物語的な面白さを求めるものではないのかもしれないが、個人的にはイマイチ。面白かったのはマジックマッシュルームでトリップした話。人間彼女なんていう卑近なものよりもこっちのほうが余程興味をそそられる。
あとレイちゃんが消えちゃった時は本気で切なかった。エッセイじゃなくて小説だったらレイちゃんメインに面白くなりそう。


満足度:★★★☆☆
正直★3つけるかも悩んだんだけど、マジックマッシュルームの話はマジで面白かったからそこを評価して。

「生徒会の周年 碧陽学園生徒会黙示録9」、感想。

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あらすじ
私立碧陽学園生徒会―そこは美少女メンバー四人が集う楽園だが、気づけば十周年。何で会長たちは年を取らないんだろう…なーんて野暮なツッコミは禁則事項ですっ!こいつはめでたいぜワッショイワッショイっていう感じで戻ってきました「生徒会の一存」!担当編集のパソコンの奥深くに眠っていた文庫未収録の超レア短編に加え、ちょっぴり大人になった生徒会メンバーが集まるファン垂涎の書き下ろし作も掲載のお祭り本の登場だ!!日々くり広げられる、ゆるすぎる会話。日々費やされる、青すぎる青春。再びいざ行かん少年少女よ、妄想という名の大海原を!

感 無 量 

とはいっても、なんだかんだでそんな久々感もない生徒会シリーズの新巻。もう完璧に終わった筈なのに何故新巻が? ボブは訝しんだ。

というわけで生徒会シリーズ22冊目。もう一巻発売から10周年ですよ。前巻(祝日)では名残惜しさもクソもねぇと言いつつもちょっとだけ寂しかったりもしたんだけど。マジで続き出るってなると困惑するわ。しつこい……しつこくない? でも買っちゃう。

内容としてはどれも何時も通りの生徒会だし。最早このシリーズについて僕が語ることは一切ないんだけど。なんというか、結構キャラ忘れてるよね! いつもの生徒会メンバーを忘れるようなことは流石にないんだけど、新生徒会メンバーとか正直キャラ薄いし。登場回数少ないキャラは自然と忘却の彼方に……。このシリーズ基本生徒会の面々(五名)が生徒会室で駄弁ってる内容でしかないのに、矢鱈キャラ多いんっすよね……。そして改めていつものメンツでの会議とか読んじゃうと、新生徒会の面々じゃやっぱ力不足だなと。

新生徒会シリーズ。別にいらなかったのでは……?

ま、まぁそれは一旦置いといて。やっぱコイツラの話読んでると高校時代に戻りたくなるんだよなぁ。この雰囲気はこの作品独特ですわ。喋ってる内容がほんと高校生の悪ふざけとか雑談でしかないからさ。そういう気持ちになるんだよ。特に読んでた時期的に丁度中二~高校の範囲にドンピシャだしね。

なんにせよ。今度こそ生徒会シリーズも終わりでしょう。ちょっと郷愁に浸ったりはしたけれど。もうお前とは二度と会うことないだろうな、杉崎。俺はもう碧陽学園から卒業したんっすわ。お前も精々達者でな。


……マジでもう出ないよね?


満足度:★★★☆☆

「ちーちゃんは悠久の向こう」、感想。

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あらすじ
「ちーちゃんこと歌島千草は僕の家のごくごく近所に住んでいる」――幽霊好きの幼馴染・ちーちゃんに振り回されながらも、「僕」の平穏な日常はいつまでも続くはずだった。続くと思っていた――あの瞬間までは。
怪異事件を境に、ちーちゃんの生活は一八〇度転換し、押さえ込んでいた僕の生活の中の不穏まで堰を切って溢れ始める……。
疑いもしなかった「変わるはずがない日常」が音を立てて崩れ落ちていくさま、それをただ見続けるしかない恐怖を描いた、新感覚のジュブナイル・ホラー。世紀末の退廃と新世紀の浮遊感を内包した、新時代作家・日日日(あきら)、堂々デビュー!!


日日日という作家を知っているだろうか。「ひひひ」ではない。「あきら」である。なんとも読みづらく、また打ち辛い名前である。人を舐め腐ったような名前だ。まぁそれは兎も角。ラノベ読みにとっては「狂乱家族日記」の人といえば通じるだろう。

この時代。僕らの世代に於いて「天才」と言われ思い浮かべる作家。それは各々によって違うだろう。例えば上遠野浩平。例えば桜庭一樹。或いは秋山瑞人、橋本紡。彼らは間違いなく天才である。特に上遠野浩平といえばそれ以降の作家に影響を齎したという意味では白眉かもしれない。しかし、そんな天才たちの中にあって。主観だけでなく客観的な意味でも間違いなく天才と呼ばれる作家。それが日日日である。高校生にして同年にファミ通のえんため大賞(佳作)、角川学園小説大賞(優秀賞)、MF文庫J新人賞、恋愛小説コンテスト、そして今作の新風舎文庫大賞を掻っ攫っていった怪物である。まさに小説を書くために生まれてきたかのような人物。生まれた時点で一般人とはどこかステージが違う。それが日日日だ。

そんな日日日のデビュー作であり、ゼロ年代ジュブナイルとアダルトチルドレンを愛する者には是非読んでもらいたいのが今作だ。

ジュブナイルホラーと銘打ってるだけあり、この作品はまさに「ジュブナイル」の部分と「ホラー」の部分が気持ち悪いくらい噛み合った新種のジャンルである。少年少女達のリアルな日常。主人公やヒロインだけでなく、名前すらない人物にまで感じる人間味。そういったもので構成される世界において、徐々に。しかし確実に日常が侵食され、壊されていく感覚。恐ろしいのは幽霊か、人間か。見えない恐怖と見える恐怖。ただ日常が崩れていくのを見守ることしか出来ない主人公。

幽霊も人間も、本来互いを認識できない。しかし確実に重なり合った世界にいるという設定。オカルトチックなものは本来関わってはいけない領域であり、エンターテイメントに貶めていいものではないという警句。ホラー面に於けるそういった含蓄。

そして主人公とちーちゃんの日常の象徴たる関係性。恋愛感情すら入り込まない、もっと大切で尊いもの。誰かとの未来を思い描け無い少年が、今を守りたいと願った友情。

だからこそ。幽霊の実存よりも、ちーちゃんが悠久の向こうに行ってしまうことが何よりも恐ろしいのだ。

この物語のラストは、正直ものすごくもやもやとした気持ちにさせられる。結局主人公の家庭環境は何一つ改善されてないし、これから主人公が普通に生きていけるかどうかも分からない。ちーちゃんという人間は死んでしまったし、最期のちーちゃんだって白先輩の悪ふざけかもしれない。幽霊も憑依も信じていなかった主人公__モンちゃんが、それでもちーちゃんの存在を信じるならば。彼もまた、悠久の彼方に足を踏み入れたということだ。その先に希望や幸福があるかは……。


満足度:★★★★☆
高校生にしてこの文章を書けてしまうこと。そしてこんな物語を綴ってしまうこと。ほんと恐ろしい才能の持ち主ですわ……。
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Author:東 京人
感想は主にラノベが中心。ライトノベルとは本格的に読み始めて10年の付き合い。初めて読んだのは13年前くらい。好きなジャンルは百合とゼロ年代だけど、面白そうなら何でも読む。基本文を書くのも妄想するのも何かを作ることも好きなので、自分で小説とかも書いてたりする。

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